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極私的アルバム評その275 - HOLY MOSES 「AGONY OF DEATH」

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HOLY MOSES
「AGONY OF DEATH」

1.Magination
2.Alienation
3.World In Darkness
4.VloodBound Of The Damned
5.Pseudohalluzination
6.Angels In War
7.Schizophrenia
8.Dissociative Disorder
9.The Cave (Paramnesia)
10.Delusional Denial
11.The Retreat
12.Through Shattered Minds / Agony Of Death (Outro)

ブルータルでエクストリームな音楽性を追求するバンドのヴォーカルが女性というのは、最近ではARCH ENEMYなどの活躍により極一般的になってきているが、このバンドがデビューした当時は、女性ヴォーカルでしかも男勝りの強烈なヴォーカルを聴かせるというのは驚きであった。

このアルバムはデビューから約30年(!!)を迎えたバンドの最新アルバムで、通産10枚目の節目となるアルバムであるが、一聴して本作にかけるバンドの意気込みが感じられる、素晴らしい出来栄えにまず驚かされる。

切れ味鋭く、突っ走るスラッシーでエクストリームな楽曲の格好良さ。サビーナ・クラッセンの圧倒的なヴォーカルパフォーマンス。公私共にサビーナのパートナーとして彼女を支えるミヒャエル・ハンケルと、ゲスト参加した大物ラルフ・サントーラによる鋭角かつ流麗なツインギター、切れ味の良いリズムセクション、それらが一体となり、ひたすら格好良いスラッシュメタルが最後まで切れ目無く続く展開は圧巻。

特にサビーナのヴォーカルは、キャリアを重ねても全く衰える事無く、凶暴で獣性を帯びた強烈なヴォーカルは益々磨きがかかっており、元祖たる強力な存在感を見せつけている。

ラルフの他、OBITUARYのトレヴァー・ペレス(G)、DESTRUCTIONのシューミア(Vo)などゲストミュージシャンも実に豪華。

最新のエクストリームバンドに全く引けをとらず、ねじ伏せるようなパワーに溢れた、バンドの現在進行形の姿を見せ付けてくれる好盤だ。

極私的アルバム評その274 - COZY POWELL 「OCTOPUSS」

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COZY POWELL
「OCTOPUSS」

1.Up on the Downs
2.633 Squadron
3.Octopuss
4.the Big Country
5.Formula One
6.Princetown
7.Dartmoore
8.the Rattler

コージー・パウエルが亡くなって早11年が経つ。

自分にとってコージー・パウエルは一種「憧れ」の存在であった。
確かなテクニックと力強さ、豪快さを併せ持つドラマーで、例えばシンバルの叩き方一つ取ってみても、他の誰とも違う「華やかさ」「オーラ」を感じさせる、稀有な存在のドラマーであった。

自分はドラム経験ゼロの全くの初心者であるが、もしドラムを叩くのであれば「こんな風に叩いてみたい」と思わせるドラマーで、正に「男が男に惚れる」「文句なく格好良い」存在であったわけだ。

元々「渡り鳥」と呼ばれ、一つのバンドに長居しない数多い彼のキャリアの中でも、純粋なソロアルバムは意外な程少なく、その数少ないアルバムの中でこのアルバムが一番気に入っている。

他のソロアルバムに比べてロック色が強く、ゲイリー・ムーアや、後に加入することになるWHITE SNAKEのメンバーが脇を固める。

ロンドン交響楽団をバックに従えたドラマティックな②、④、コリン・ホッジキンソンのベースとの緊張感溢れるバトルが聞き物の③、ゲイリー・ムーアの泣きのギターが、名曲「SUNSET」を思わせる⑦、デヴィッド・カヴァデールとの共作であるハードロックチューン⑧など、彼のダイナミックなドラムプレイが堪能できるアルバムとなっている。
個々の楽曲の良さ、バックメンバーの堅実なプレイも光る。

ドラマーのソロアルバムでしかも全編インストのアルバムとなると、聴いていて単調と思われるかもしれないが、そんな思いはアルバムを聴いてしまえば、吹っ飛んでしまうに違いない。

やたらテクニカル、やたらスピーディーな小手先のドラムとは違う、一球入魂ならぬ「一叩入魂」とでも言うべき熱いドラムが聴けるアルバムだ。

極私的アルバム評その273 - Sunn O))) 「Black One」

雑文にて候-Black One

Sunn O)))
「Black One」

01. Sin Nanna
02. It Took The Night To Believe
03. Cursed Realms ( Of The Winterdemons )
04. Orthodox Caveman
05. Candlegoat
06. Cry For The Weeper
07. Bathory Erzsebet

アメリカ出身のドローンメタルバンド、SUNN O)))の通算6枚目のアルバム。

ドローン(英: drone)とは、単音の変化の無い長い音のことを表すが、ドラムレスで、ノイジーなディストーションを効かせた強烈に歪んだギターとベースが、メロディもはっきりとした曲構成も無いリフを、ひたすら執拗に繰り返す様は、非常に実験的でアバンギャルドであり、正にドローンなサウンドであると言える。

前衛ミュージシャン、オレン・アンバーチやブラックメタルのヴォーカルによる、ヴォーカルとはとても言えない叫び声や呻き声も随所にフューチャーされており、黒い僧衣を身にまとったメンバーの不気味なルックスと相まって、非常に禍々しくもダークな音世界が展開されている。

ボリュームを上げてスピーカーで聴けば、余りのヘヴィな低音にビリビリとノイズが入り、イヤホーンで聴けば、決して大袈裟ではなく音圧で体全体が揺れるような感覚を覚える。まさに耳から入った音が三半規管を揺らし、まるで頭や内臓が波打つような感覚になるのだ。

長時間聴くのは辛いのに、ついつい何度も聴いてしまう、まるで麻薬のようなノイズの洪水。

闇の世界に引きずり込まれそうな不気味なジャケットを眺めながら聴くと、体に不調をきたすかもしれない、ある意味非常に危険なサウンドだ。